【ロシア】200日の漂流―モスクワ大学留学記2010-2011

2010年07月06日

非在来型天然ガス

 昨日、「非在来型天然ガス」が少し話題に出ましたが、今回はそれについて述べていきます。

露の影響力低下へ 天然ガス、非在来型が台頭
(5月31日、サンケイビズ)
 地中の岩石層などに含まれ「非在来型」と呼ばれる新たな天然ガス資源が世界のエネルギー市場を塗り替え始めた。採掘コストが抑えられ、価格が低下してきたためだ。従来の天然ガスは主にロシアや中東諸国などが輸出してきたが、非在来型は中国や欧州を含む多くの国に分布。これまで強気の資源外交を展開してきたロシアなどの影響力が弱まるとも指摘されている。
 
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 東京ガスは最近、オーストラリア北東部で、非在来型の一種で石炭層に閉じ込められている「コールベッドメタン(CBM)」を採掘する事業に参画した。2015年から20年間、採掘したガスのうち年120万トン分を購入。同社の年間購入量の11%に相当する。
 木本憲太郎・原料企画担当部長は「調達先を多様化するため、価格面などでメリットがあれば第2弾を考えたい」と、インドネシアなどからの購入を検討していることを明らかにした。
 インドネシアでは、すでに大阪ガスや石油資源開発などの日系4社が昨年11月に開発会社を設立。米国や豪州、欧州の開発事業にも注目している。
 同様にペトロチャイナなどの中国企業が豪州の開発案件に参画。中国では自国内にも大量のCBMがあるとされ、経済発展に伴うエネルギー需要を賄おうとしている。ロシア産の天然ガスへの依存を低くしたい欧州ではドイツや英国などにCBMがあり、開発に乗り出している。

 CBM開発が進んだきっかけは、別の非在来型で岩の層に含まれる「シェールガス」の開発だった。米国の中小業者がコスト削減で採算を確保。米国では25年に1億3千万トン程度のLNG(液化天然ガス)輸入が必要とされたが、シェールガスの登場で予測は2千万トン強まで下がり、「シェールガス革命」と呼ばれた。
 これがCBMに波及。日本エネルギー経済研究所の橋本裕主任研究員は「このさき数年は非在来型の開発案件が豊富にあり、価格の低下傾向が続くだろう」と指摘している。
 天然ガスをめぐっては、大産出国のロシアが欧州向けパイプラインや極東の石油・天然ガス田開発を通じて外交的な発言力を高めてきた。天然ガス価格は石油価格を目安に決められてきたが、非在来型の登場によって「石油価格との連動性が薄れる」と指摘する声もあり、ロシアや中東諸国が供給量調整を通じて行ってきた市場支配を維持できなくなる可能性もある。

【用語解説】非在来型天然ガス
 ガス層から噴き出す一般的な天然ガス(在来型)と違い、岩や石炭の層に封じ込められている。深海底地下にある氷状の「メタンハイドレート」もその一種。在来型の埋蔵量は世界需要の約60年分、非在来型を含めると200年超とされる。


 従来、天然ガスや石油をはじめとする資源における強みは、外交戦略上かなり有利なものでした。ロシアの天然ガス、中東諸国の石油など、それらの国々の動向を見てみれば、明らかです。つまり、世界においてある一定の「資源覇権」ともいえる、国際関係が存在していたのです。その国際関係が、今回取り上げた「非在来型天然ガス」や「シェールガス」の台頭により、崩れていくのではないかということです。
 昨日取り上げたポーランドの件についていえば、これまでポーランドは否応なしにロシアにエネルギーを依存していかねばならず、政治関係においても少なからぬ不自由が生じていました。しかし、新しいエネルギーの利用により、その依存度が軽減され、政治的にもその「縛り」が緩くなるだろうということです。そして、このエネルギー形態の変化による政治関係への影響は、ポーランドの事例で終わるわけはありません。先の記事のように、ロシアのガスに脆弱的なヨーロッパ諸国にとっては、ただならぬことです。このような影響が大々的に波及してしまえば、国際関係に大変化がもたらされることも、あながち想像に難くないのではないでしょうか。
 
 この「非在来型」ですが、決して他人ごとではありません。日本でもその採掘が大いに期待されています。まだ研究のための採掘しか行われていませんが、日本の領海内には多くのの「非在来型」資源が眠っているそうです。ですので、開発が実用化されれば、長い歴史の中での日本の弱点だった資源面での克服が期待できるのです。


 石油が世界におけるエネルギーを支配し始めたことで、これまで特に魅力のなかった中東諸国への注目が過熱し、結果的に国際情勢を動かす火種となってしまいました。このようなレベルに近い転換が起ころうとしているのかもしれません。実用化なども時間の問題ですし、このエネルギー変化がどのような影響をもたらすかただ注目するしかありません。
 そして、ロシアがどのようなエネルギー戦略上の対応をするかも見ものです。


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posted by Itta at 00:06| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月12日

ウクライナへのガス供給

 先日、プーチン首相とウクライナの首相ミコラ・アザロフが会談し、新たな原子炉の建設のためにロシアからウクライナへ50〜60億ドルを貸与することが取り決められました。それに加え、ガス供給についても話し合いが行われましたが、最終的な合意には至らなかったそうです。

 合意には至りませんでしたが、プーチンはウクライナの案に関心を示している模様で、早期の合意が期待できそうです。
 昨年取り決められたガス価格は、かなり高いものだそうで、このままではウクライナの化学工業は停滞しかねないとされています。そのような必死さは、正教会からも伺えるものです。それを食い止めるためにも新たな取り決めが必要とのこと。

 また、ウクライナはロシアからのガス輸入量を10パーセントほど増の365億立方メートルまでに上げる方針も打ち出しました。近年ウクライナは、490億立方メートルから268億立方メートルに、輸入量をカットしていました。この対応の変化も、ガス価格取り付けの早期解決に大きな影響を与えそうです。

 現在、ロシアからヨーロッパに供給されているガスの80パーセントは、ウクライナを経由しているそうです。近年の一連のガス戦争は、これがために被害が大きかったのです。その対策として、ウクライナを迂回するサウスストリームというパイプラインが建設中でしたが、今回ウクライナとロシアの関係が修復に向かえば、サウスストリーム完成前に、安定が訪れるかもしれません。
 ヤヌコビッチ大統領は、少し前にサウスストリーム建設に待ったの声を出しましたが、これは、迂回されては困るという意味でしょう。そもそも、サウスストリームは、ウクライナとの関係が悪化している最中に建設が取り決められたもので、もしウクライナとロシアとの関係が良好であれば、その存在意義は薄れてしまいます。
 ただ、ヤヌコビッチ政権がいつまで続くは分かりませんし、いつまた軋轢が生まれてもおかしくはないでしょう。そう考えると、サウスストリームの建設を継続することは、ある種の保険になるのだと思います。

 まだ、政権が成立してから数ヶ月ですので、今後がどうこうというのは時期尚早かもしれませんが、考えてみる価値は大いにあると思います。


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2010年04月07日

経済好転!?

 ロシアが、一連の世界金融危機で最も打撃を受けた国の一つであるということは、よく語られます。そして、その傷は深かったようで、現在もなおその影響は残っています。しかしながら、カマズ(自動車会社)やヴォルガテレコム、PIKグループ(不動産開発、建設、住宅基金運用などを扱うディベロッパー)、ノヴォリペツク製鉄などの大手が軒並み黒字に転ずるなど、回復の兆しは見えている模様です。

 そのような中、財務省にも動きが見られます。
 政府が請け負う公債において、海外からの債務(特にユーロ債務)を減らし、国内からの債務を増やすという方向を示しました。これは、国内の経済状況が好転したことにより、公債におけるルーブルの割合が大きくなるということを意味します。単にルーブルの割合が大きくなるだけですので、全体の債務額は変わりません。
 最近、原油価格の上昇や、海外から関心を得ている利回りの良い資産などの影響で、ルーブルが強くなっています。一年間でユーロに対して、およそ10〜15パーセントほどルーブル高に転じています。このような変化が、今回の国家予算の見直しに繋がったのでしょう。
 そして、2011年、2012年…と、今後の予算の見直しも予定されています。

 ただ、一番良かった頃に戻るには、まだまだ月日がかかるそうです。現段階では、2015年までには、安定した予算を組んでゆきたいということが言われています。ただ、上記のように、少なからず良い状況には向かいつつありそうです。

 ここ数ヶ月の動きのみで、事を計るのは少々軽率かもしれませんが、あの金融危機をどん底だと考えると、このように上向きを示すことは不思議ではないかもしれません。

参照The Moscow Times

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posted by Itta at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月29日

食料の確保!

 先週の金曜に、ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国、いわゆるBRICsの間で、食料問題に関する協議が行われた。各国の農業大臣が集まり、農業や貿易について話し合われた。
 協議では、WTOのドーハラウンドを完了させるなどの国際経済についてのほか、4カ国で団結して、農業を伸ばしてゆくことなどが話題に挙がった。何でも、各国が需要と供給の算定をより正確に行ってゆくためのデーターベースを、協力して設立するという。また、農業技術分野における開発も協力してゆくそうだ。そして、4カ国間の貿易をもっと活発にしてゆこうじゃないか、ということも話し合われたという。

 現在、BRICsは、世界の人口の42%を占め、世界の耕作地の32%を占めている。さらに、小麦は世界の40%、豚は世界の50%、家禽(家畜として飼育される鳥)は30%以上、牛肉は30%、それぞれ占めている。

 ロシアの貿易に占めるこの4カ国の割合はすでに高い。肉類の65%はブラジルから輸入し、農業分野において全体の12.4%をブラジルは占めている。また、インドは穀類やナタネ、アブラナなどの油糧作物の買い手として確実だそうだ。
 しかし、ロシアは他国からの農業生産物の輸入を増やそうという気は、そんなに無いという。今年最初の食料問題に関する方策(ドクトリン)において、メドベージェフは、国内で消費される肉類の85%は、国内で生産すると述べ、ロシアという国自体を、局地的に、主要な農業輸出国にすると発表したそうだ。目標としては、今後15年で、農業輸出額を2倍にするといわれている。

 
 現在、世界的な問題として人口増加による食料不足が挙げられている。これからは、食料の奪い合いが起こるとも言われているほどにである。飽食の国にあっては、なかなか実感しづらいが、現実はそのようだという。ロシアをはじめとするこの4カ国には、水面下での動きともいうべく、時代に対する「鋭敏」さを感じる。国家としていかに生き残ってゆくか、これを常に自問しているような態度を、この一連の協議から、ふと感じた。


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2010年03月25日

ダイムラー贈賄とロシア

 ネットニュースを巡っていたら、少し目を引く記事を見つけた。

 
独ダイムラー、22か国で贈賄攻勢…米メディア 【ニューヨーク=小谷野太郎】独自動車大手ダイムラーが1998年から2008年にかけ、少なくとも22か国の政府関係者に現金などわいろを供与したとして、米司法省が米連邦法の海外腐敗行為防止法違反で訴追したことが23日分かった。
 米メディアが報じた。
 ダイムラーは98年以降、中国やロシア、ベトナムなどの政府当局者に、現金や高級車など数千万ドル相当のわいろを贈り、見返りに政府への車両販売契約を得て不当な利益を得ていた疑いがある。初公判はワシントンの米連邦地裁で4月1日に開かれる。
 ただ、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(電子版)は23日、ダイムラーが米司法省と米証券取引委員会(SEC)に総額1億8500万ドル(約167億円)を支払い、和解することで合意したと報じた。   (2010年3月24日14時06分 読売新聞)


 ロシアもか…、と思い、すぐさま海外記事(The Moscow Times)に飛んでみた。すると、かなり詳しいものが出てきた。
 
 アメリカの司法省によると、ダイムラーのロシアへ贈与の総額は、2000年から2005年の期間に、300万ユーロ(約400万ドル)を越えているという。そして、贈与先の内訳も報告されている。

・内務省:180万ユーロ
・Federal Guard Service’s Special Purpose Garage:乗用車に140万ユーロ、広告用車に58,000ユーロ
・Dorinvest:51,217ユーロ
・Mashinoimport:30,072ユーロ及び15,000ドイツマルク
・Ufa:64,221ドイツマルク
・Novy Urengoi:38,726ユーロ
・Military(軍部):24,966ユーロ

 Dorinvest、Mashinoimport、Ufa、Novy Urengoiに関しては、恐らく町の名前なのだろうが、あまり確信を持つことは出来ない。ただ、Federal Guard Service’s Special Purpose Garageについては、上手い邦訳は見つからないが、政府関係のものであるということは分かる。
 今回発覚した贈与の主な目的は、ロシアにおける顧客の確保、とりわけ政府系とのビジネスの保護のためと言われている。ダイムラーは、海外での口座を通じて、各国政府筋に金を流しており、手数料や特別利子という名目で通っていたという。また、会社自体に、中心的な監視部というべきものが無く、賄賂に関しても大目に見られていたそうだ。

 先の詳細表の通り、大方の賄賂は政府筋に流れている。内務省関係については、警察の車の購入なども含まれているという。また、Federal Guard Serviceは、名前から察するに、護衛車とでもいうものだろうか、これへの金もやたらと多い。特に、メルセデスベンツなどの購入が多いそうだ。政府の要人の移動の際などに使われるという。Federal Guard Serviceへの140万ユーロの内、928,023ユーロは、ドイツ銀行に、個人名義で預けられていたとも報告されている。
 Dorinvest、Mashinoimport、Ufa、Novy Urengoi及び軍部については、主として、ウニモグ(Unimog)というトラックの購入が目立ったという。
 ロシアでは、政府はロシア産の車に乗れと叫ぶけれども、そう言う自分たちは外国産にばかり乗っているという不満はあったそうだ。そのカラクリというか、実際的原因としては、今回発覚したような賄賂が考えられる。

 ロシアでは、2000年から2005年にかけて、贈賄がなされたといわれているが、去年の数字だと、ロシアにおけるメルセデス製の車とトラックの売り上げは、全体の新規売上の0.9パーセントだったと、報告されている。

 以前、ロシアでの賄賂について書いたことがあったが、今回は直接それとは結びつかないかもしれない。先の記事のように、少なくとも22カ国での贈賄が確認されているのだから。ダイムラーは以前から、不祥事などが報告されており、今回のもその延長線上にあるものではなかろうか。


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posted by Itta at 15:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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