露の影響力低下へ 天然ガス、非在来型が台頭
(5月31日、サンケイビズ)
地中の岩石層などに含まれ「非在来型」と呼ばれる新たな天然ガス資源が世界のエネルギー市場を塗り替え始めた。採掘コストが抑えられ、価格が低下してきたためだ。従来の天然ガスは主にロシアや中東諸国などが輸出してきたが、非在来型は中国や欧州を含む多くの国に分布。これまで強気の資源外交を展開してきたロシアなどの影響力が弱まるとも指摘されている。
東京ガスは最近、オーストラリア北東部で、非在来型の一種で石炭層に閉じ込められている「コールベッドメタン(CBM)」を採掘する事業に参画した。2015年から20年間、採掘したガスのうち年120万トン分を購入。同社の年間購入量の11%に相当する。
木本憲太郎・原料企画担当部長は「調達先を多様化するため、価格面などでメリットがあれば第2弾を考えたい」と、インドネシアなどからの購入を検討していることを明らかにした。
インドネシアでは、すでに大阪ガスや石油資源開発などの日系4社が昨年11月に開発会社を設立。米国や豪州、欧州の開発事業にも注目している。
同様にペトロチャイナなどの中国企業が豪州の開発案件に参画。中国では自国内にも大量のCBMがあるとされ、経済発展に伴うエネルギー需要を賄おうとしている。ロシア産の天然ガスへの依存を低くしたい欧州ではドイツや英国などにCBMがあり、開発に乗り出している。
CBM開発が進んだきっかけは、別の非在来型で岩の層に含まれる「シェールガス」の開発だった。米国の中小業者がコスト削減で採算を確保。米国では25年に1億3千万トン程度のLNG(液化天然ガス)輸入が必要とされたが、シェールガスの登場で予測は2千万トン強まで下がり、「シェールガス革命」と呼ばれた。
これがCBMに波及。日本エネルギー経済研究所の橋本裕主任研究員は「このさき数年は非在来型の開発案件が豊富にあり、価格の低下傾向が続くだろう」と指摘している。
天然ガスをめぐっては、大産出国のロシアが欧州向けパイプラインや極東の石油・天然ガス田開発を通じて外交的な発言力を高めてきた。天然ガス価格は石油価格を目安に決められてきたが、非在来型の登場によって「石油価格との連動性が薄れる」と指摘する声もあり、ロシアや中東諸国が供給量調整を通じて行ってきた市場支配を維持できなくなる可能性もある。
【用語解説】非在来型天然ガス
ガス層から噴き出す一般的な天然ガス(在来型)と違い、岩や石炭の層に封じ込められている。深海底地下にある氷状の「メタンハイドレート」もその一種。在来型の埋蔵量は世界需要の約60年分、非在来型を含めると200年超とされる。
従来、天然ガスや石油をはじめとする資源における強みは、外交戦略上かなり有利なものでした。ロシアの天然ガス、中東諸国の石油など、それらの国々の動向を見てみれば、明らかです。つまり、世界においてある一定の「資源覇権」ともいえる、国際関係が存在していたのです。その国際関係が、今回取り上げた「非在来型天然ガス」や「シェールガス」の台頭により、崩れていくのではないかということです。
昨日取り上げたポーランドの件についていえば、これまでポーランドは否応なしにロシアにエネルギーを依存していかねばならず、政治関係においても少なからぬ不自由が生じていました。しかし、新しいエネルギーの利用により、その依存度が軽減され、政治的にもその「縛り」が緩くなるだろうということです。そして、このエネルギー形態の変化による政治関係への影響は、ポーランドの事例で終わるわけはありません。先の記事のように、ロシアのガスに脆弱的なヨーロッパ諸国にとっては、ただならぬことです。このような影響が大々的に波及してしまえば、国際関係に大変化がもたらされることも、あながち想像に難くないのではないでしょうか。
この「非在来型」ですが、決して他人ごとではありません。日本でもその採掘が大いに期待されています。まだ研究のための採掘しか行われていませんが、日本の領海内には多くのの「非在来型」資源が眠っているそうです。ですので、開発が実用化されれば、長い歴史の中での日本の弱点だった資源面での克服が期待できるのです。
石油が世界におけるエネルギーを支配し始めたことで、これまで特に魅力のなかった中東諸国への注目が過熱し、結果的に国際情勢を動かす火種となってしまいました。このようなレベルに近い転換が起ころうとしているのかもしれません。実用化なども時間の問題ですし、このエネルギー変化がどのような影響をもたらすかただ注目するしかありません。
そして、ロシアがどのようなエネルギー戦略上の対応をするかも見ものです。
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