【ロシア】200日の漂流―モスクワ大学留学記2010-2011

2010年03月07日

フィンランド化

 少し興味深い論評に触れて、なるほどと思うことがあった。それは、ロシアと西欧米の間に挟まれた国々で、新たな「フィンランド化」現象が起きているという指摘である。
 「フィンランド化」というのは、かつての冷戦構造におけるフィンランドのあり方、議会制や資本主義システムを導入しているにも関わらず、共産主義圏内に含まれる、という状況を指す。西欧米諸国からすると、共産主義圏内というネガティブなイメージを持ってしまうが、共産主義圏内にどっぷりと浸かっていた東欧諸国からは、ソ連から自立しているという意味で、肯定的に捉えられていた。
 現在は、ソ連崩壊から20年弱経ち、冷戦時代はもはや「歴史」となっている。けれども、また「フィンランド化」という考えが持ち込まれたのは、現代のロシアと西欧米諸国の関係性が、まだ冷戦時代のような色分けされるものだからである。ロシアと西欧米の境界線は、かつては東欧諸国だったのが、現在はCIS(独立国家共同体)諸国になっている。CIS諸国というのは、ウクライナやベラルーシ、カザフスタンなどの、旧ソ連の地域の国々のことである。

 この「フィンランド化」と呼ばれた背景には、2008年のグルジア戦争、最近のウクライナの情勢変化などがある。つまり、西欧米とロシアとの間で、激しく揺れ動いており、何方付かずの状況が続いているということである。この状況に対して、ロシアと西欧米は、いかなる姿勢を示してゆくかを明確にする必要がある。
 間に挟まれている国々を、自分たちの領域に引き入れようとする態度は、結局武力行使を呼び込み、失敗に終わったことは、歴史が教えてくれている。一番理想的なのは、それぞれの国の独自の決定権を尊重することである。ただ、これはかなり難しいと言わねばならない。ロシアや西欧米の主要国との経済的、軍事的関係性を無視することは出来ず、それらを無視しては、国が立ち行かなくなるからである。地政学的な宿命というものをずっと背負うことになるのだろう。

 ただ、間に挟まれている国々について、如何こうという前に、そもそもロシアと西欧米の違いは何なのだろうか、という問題を考える必要がある。ソ連崩壊以降、両者の違いは、曖昧になった。
 そんな中、西欧米は、ロシアに民主主義は存在せず、人権問題や軍事問題など批判し、自らとは相容れないものとして見ている。一方ロシアは、西欧米は自らの民主主義のあり方を押し付けているだけだ、としている。結局、非難のし合いで、対立しているという状況だ。確かに、オバマ大統領が、関係修復を宣言しているけれども、今後上手く事が進むとは現状からは確信して言うことは出来ない。依然、両者は同質には分類出来ないと見たほうが、賢明だと思われる。経験してきた歴史、思想、というのを異にしている両者が、そう簡単に、即座に相容れるとは、やはり考えられない。

 明確なビジョンを両者とも打ち出すべきだ、と叫ぶのは大変楽だが、そんな簡単なものではない。現状維持のまま、何か起きたときに動くというのが、ひょっとしたらベターなのかもしれない。だが、そこで悩むのは両者ではなく、その間に挟まれている国々である。何か両者に特別な動きが無い限り、益々、現代的「フィンランド化」は広がってゆくだろう。


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posted by Itta at 16:42| Comment(0) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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