今年はじめの大統領選挙や、経済危機など動向があわただしいウクライナに、また新たな動きがありました。4日前にニュースを読んで、気になっていました。
ウクライナ大統領、権限強化狙い憲法改正へ (ロシアの声 24.08.2010, 16:28)
ウクライナのヤヌコビッチ大統領は24日、独立記念日に合わせ首都キエフで演説したなかで、大統領権限の強化など憲法を改正する方針を明らかにした。インターファクス通信などが報じた。
同国では04年の政治改革の結果、06年に憲法が改正し、「大統領・議会制国家」から「議会・大統領制国家」へ。任命できる閣僚が外相と国防相のみとなるなど大統領権限が大幅に縮小した。
ヤヌコビッチ氏は演説で、安定した政治システムの確立を目的に憲法改正を提案することを明らかにし、「強い大統領と適格かつ系統立った議会、不可侵の閣僚がいない責任あるプロの行政」を条件として掲げた。大統領権限強化を意識した発言とみられる。改正時期には言及しなかった。
また外交については、「ロシアとの接近は欧州統合を阻害せず、逆に促進する」と露欧双方との関係構築は可能との持論を展開。欧州連合(EU)準加盟に向け、秋のウクライナ・EU首脳会合で一定の成果があるとの認識を示した。
ヤヌコビッチ氏は親露派政党を支持基盤としており、今年2月の就任後ロシアとの間で急速に関係を改善している。
詳細を得るために、The Moscow Timesの記事を参照してみます。
ヤヌコビッチ大統領は、今年はじめの大統領選で、辛くもティモシェンコ前首相に勝利しました。現在、ティモシェンコ氏は野党としてヤヌコビッチ氏に対抗しています。
今回の、大統領の権限を増幅するという改正案には、やはり非民主的であると非難があります。とくにティモシェンコ氏のように「西側」の民主主義を標榜する政治家からすればまったくもって受け入れられないことでしょう。ティモシェンコ側は、独自の憲法改正案を出すとしていますが、詳細はまだわかっていないとのこと。
今回のヤヌコビッチ氏の憲法改正の意図は、マスメディアへの圧力の兆候だと指摘する批評もなされています。
つまり、ヤヌコビッチ氏による、いわゆる「強権化」が焦点となっているということです。
この憲法改正案が出てきた背景には、記事にある「大統領・議会制国家」を目指した現在の憲法の行きづまりにあります。「民主的」だとされる議会での話し合いは、議論の難航を招き、なかなか権力の決断ができなかったそうです。そして、そのような行政「麻痺」がユーシチェンコ前大統領の支持低下につながったとの見方もされております。
現代世界において、強権的な政治というのは民主主義と相容れぬとして、たびたび非難の的になります。ロシアでのプーチン政権も同様な理由で批判を受けていました。非民主的なものに対しては、アレルギーともいえるほどに反応してしまうきらいがあることは、決して否めません。
しかし、今回のウクライナのような、IMFに援助を受けているような緊急事態において、いちいち民主的な手続きをやっていて国がうまく回るかどうかは、はなはだ疑問が残るところです。実際に、前政権は失敗してしまったわけですし。ときとして、有能な「リーダー」による上からの政治によって功を奏すことがあります。ただ、この「リーダー」は、別の見方をすれば「独裁者」と呼ばれる可能性もあるわけです。
まとめると、必ずしも「民主的」なものがよいわけではないという例もあるということです。そう考えると、今回のヤヌコビッチ氏の意図は十分理解できると思います。ウクライナに見られる、ある意味ジレンマにも思える争点は、難しいことだと思います。結局、うまくいくかどうかで、その評価が決まってしまうのですから……
民意、民意といってばかりでは先には進まないよ、と水をさすかのようなウクライナの出来事でした。たいへん示唆的な問題として考えます。
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