【ロシア】200日の漂流―モスクワ大学留学記2010-2011

2010年04月26日

『さらばモスクワ愚連隊』

 作家、五木寛之のデビュー作は、『さらばモスクワ愚連隊』といいます。本作品は、ソ連時代の「雪どけ」の頃が描かれており、いわゆる西側のものに魅了されている若者や、それに頭をかかえるソ連当局の葛藤が盛り込まれています。単に文庫本50ページ程度という短い物語ですが、当時の状況が如実に表されているといいます。
 主人公は、日本のジャズバンドをロシアで公演させるためのプロデュースを名目のもとモスクワを訪れますが、これには日ソ関係に絡む、政治や財界の動きが裏にあります。しかしながら、かつてジャズピアニストとして鳴らしていた主人公は、ジーンズに、派手なチェックのシャツ、リーゼント風の髪型をし、ジャズをたしなむという「西」に影響されている若者と出会ったり、そのような状況に悩む、共産党関係者と接することに、様々な感慨を覚えてゆきます。短い小説なので、あらすじを書きすぎると、もはやあらすじではなくなり、ほとんど内容を網羅してしますので、このくらいにしておきます。

 この作品は、当時ずいぶんと物議をかもしたそうです。恐らく、リアルに描かれすぎているという理由でしょうか。ソ連のある種の「閉鎖性」が作品を通じて感じられます。ここに、五木寛之の興味使いコメントがあります。

「私はもちろん、文学をやる積もりでこれらの作品を書いたのではない。私が夢をみたのは、1960年代という奇妙な時代に対する個人的な抵抗感をエンターテイメントとして商業ジャーナリズムに提出する事であった。ソヴェートにおけるジャズ、日本における流行歌などで象徴される、常に公認されざる“差別された”現実に、正当な存在権をあたえたと私は望んだ。エンターテイメントという形を借りて、自分をとりまく状況に、一丁文句をつけてやろうと思ったのである。」

 
 五木寛之は、早稲田の露文科に在学しており(当時は除籍処分、後に未納分を収め、中退扱いとなる)、後にロシアをはじめとする海外を渡り歩いています。そのときに視た、ロシアに対する所感が、存分に作品に反映されているのだと思います。余談ですが、本作品の主人公も、大学は除籍扱いとなっているのは、著者のことを彷彿とさせています。
 大作家の、若き頃の感性によるロシア感は、当時を知るための重要な資料として現在もなお受け継がれています。


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posted by Itta at 00:07| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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