【ロシア】200日の漂流―モスクワ大学留学記2010-2011

2010年04月12日

ウクライナへのガス供給

 先日、プーチン首相とウクライナの首相ミコラ・アザロフが会談し、新たな原子炉の建設のためにロシアからウクライナへ50〜60億ドルを貸与することが取り決められました。それに加え、ガス供給についても話し合いが行われましたが、最終的な合意には至らなかったそうです。

 合意には至りませんでしたが、プーチンはウクライナの案に関心を示している模様で、早期の合意が期待できそうです。
 昨年取り決められたガス価格は、かなり高いものだそうで、このままではウクライナの化学工業は停滞しかねないとされています。そのような必死さは、正教会からも伺えるものです。それを食い止めるためにも新たな取り決めが必要とのこと。

 また、ウクライナはロシアからのガス輸入量を10パーセントほど増の365億立方メートルまでに上げる方針も打ち出しました。近年ウクライナは、490億立方メートルから268億立方メートルに、輸入量をカットしていました。この対応の変化も、ガス価格取り付けの早期解決に大きな影響を与えそうです。

 現在、ロシアからヨーロッパに供給されているガスの80パーセントは、ウクライナを経由しているそうです。近年の一連のガス戦争は、これがために被害が大きかったのです。その対策として、ウクライナを迂回するサウスストリームというパイプラインが建設中でしたが、今回ウクライナとロシアの関係が修復に向かえば、サウスストリーム完成前に、安定が訪れるかもしれません。
 ヤヌコビッチ大統領は、少し前にサウスストリーム建設に待ったの声を出しましたが、これは、迂回されては困るという意味でしょう。そもそも、サウスストリームは、ウクライナとの関係が悪化している最中に建設が取り決められたもので、もしウクライナとロシアとの関係が良好であれば、その存在意義は薄れてしまいます。
 ただ、ヤヌコビッチ政権がいつまで続くは分かりませんし、いつまた軋轢が生まれてもおかしくはないでしょう。そう考えると、サウスストリームの建設を継続することは、ある種の保険になるのだと思います。

 まだ、政権が成立してから数ヶ月ですので、今後がどうこうというのは時期尚早かもしれませんが、考えてみる価値は大いにあると思います。


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2010年04月10日

キルギスについて

 先日、キルギスで反政府行動が起き、今のところ暫定政府が設立されている。しかし、依然、物議は収まらない。

キルギス:政権崩壊 野党「ロシアが役割」 追放の大統領「信じない」
 【ビシケク大前仁】中央アジア・キルギスの反政府暴動で、「臨時政府」を樹立した野党勢力の指導者の一人テケバエフ氏は8日、「バキエフ大統領の追放にロシアが役割を果たした」と述べた。ロイター通信が報じた。ロシアは関与を否定しているが、他国に先駆けて「臨時政府」を事実上承認しており、議論を呼びそうだ。
 同通信によると、テケバエフ氏は、大統領の追放を「ロシアが喜んでいる」と語り、このため米軍がアフガニスタンへの物資輸送拠点に使っているマナス空軍基地も「米軍の駐留期間が短くなる可能性が高い」と語った。同通信はまた、米露首脳会談のためプラハにいるロシア高官が「キルギスにはロシア軍基地だけがあればよい。バキエフ(大統領)は米軍基地を排除する約束を守らなかった」と語ったと伝えた。
 「臨時政府」首班のオトゥンバエワ元外相も8日、ロシアの民放ラジオ「モスクワのこだま」との電話インタビューで、プーチン首相が支援を約束したと感謝を表明し、協議のため同志のアタムバエフ元首相をモスクワに派遣すると語った。
 一方、追放されたバキエフ大統領は8日、同ラジオの電話インタビューで、政変を「武力による政権奪取」と非難し、辞任を拒否した。また「外国の力なしにこうした作戦を実施することは事実上不可能だ」と述べたが、名指しは避け、「ロシアが自分を見捨てたとは思わない」とも語った。別のロイター通信とのインタビューでは「背後にロシアがいるとは言えないし、信じたくない」と語った。いずれも現在の避難先については「キルギスの南部」とだけ答え、正確な場所は明言しなかった。
 プーチン首相は7日の会見で「ロシアは今回の暴動には一切関係がない」と関与を否定している。 (毎日新聞 2010年4月9日 東京夕刊)


 これに、英BBCの記事を参照したい。
 追放されたバキエフ大統領は、今、彼の出身地であるジャラーラーバードにいるそうだ。具体的な場所は明かされていない。そして、今キルギス、特に首都ビシケクに戻れば、命を狙われると、恐れていると語った。民衆の反感を買ったこと、警察に銃の使用を認めたことの責任を問われるから、と。それでも、まだ大統領職は主張しており、今後の行動についても構想があるという。それは、彼の地盤地方である、南キルギスとビシケクのある北側とを分断するか、ということである。今後の国内紛争を防ぐためにも、国に残ると言っている。更には、暫定政府には法や体制を整えるのは難しいと、批判した。
 一方で、野党指導者オトゥンバエワ元外相代行は、バキエフ大統領に対して、今が国を立ち去る絶好のチャンスだとし、辞職を認めるのなら、安全の保証はする、と述べたそうだ。彼女は、プーチン首相から、暫定政府の認定、及び支援の旨の電話を受けた人物である。
 
 現状からは、しばらく軋轢は続くと見られる。ただ、別の焦点として、ロシアがこの反政府行動に関与したかどうか、ということが挙がっている。現在のところ、否定はされているものの、はっきりと白だと断言することは容易ではない。また、キルギスには対アフガン戦略として、米軍が在留している。これがやっかいなことで、単なる国内問題に収まりそうにない。貿易相手としては、ロシアが最大であるが、実際のODAなどの支援は、アメリカが一位である。(世界的にもアメリカの支援規模は大きいので、とりわけキルギスに肩入れしているとは明言しがたい)
 更に、忘れてはならないことは、キルギスは旧ソ連の諸国で構成されるCIS(独立国家共同体)に加盟しており、また中国、ロシアで進めている上海協力機構の正加盟国である。正加盟国は、中国、ロシアのほかにカザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの4カ国で、これらは一応親露派と言われる。一応、以前からキルギスは親露派だったので、今回のことも、特別ロシアは問題視しなかったのかも知れない。つまり、昨今のグルジアやウクライナとは、事情が異なるのではないか、ということである。
 ただ、CIS諸国は、ロシアにとって重要な外交アクターであるため、いくら親露といえども、楽観視はされないだろう。だから、ロシアの関与というのは、割合現実味がある上、大変興味深い推測だと思う。全面的な関与、という深い関わりはなくとも、ロシアの諜報機関は、キルギスで何か反政府行動が起こるという情報は掴んでいたとは、個人的に考える。
 今後、あらゆる情報や動向が見られるはずなので、しばらくは静観しようと思う。


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2010年04月09日

ノスタルジア

 ノスタルジア。望郷、郷愁の念などの故郷を懐かしむこと。
 ロシアとの結びつきでいえば、A・タルコフスキーの『ノスタルジア』という映画作品を思い起こす人もいるでしょう。私も一度観たことがありますが、ハリウッド映画とは異なる、何やら異様な雰囲気に呑まれたことを覚えています。

 ロシア人には、ソ連時代は良かったと懐かしむ人が結構いるそうです。また、ドイツでも、旧東ドイツ側からも、社会主義時代が良かったと、回顧する人がいるという。
 社会主義時代おいては、企業による競争がなく、資本主義に翻弄されることはありませんでした。機械的に労働し、あるいは、労働とも呼べないほどに「楽」な就労状況だったといいます。そして、何もせずに生活が保障されていたので、現在から考えると、語弊を恐れずに言えば、さぞ良いものに映ります。
 ロシアの専門家に、佐藤優と亀山郁夫という人たちがいますが、彼らが訪れた1970年代には、少なからず「良い」印象があったそうです。(『ロシア 闇と魂の国家』参照)

 「昔は良かった…」という単なるノスタルジアからは何も生まれないという、ストイックな意見がありますが、確かに頷けます。ソ連の崩壊を悲しまないものには心がないが、それを再興させようとするものには頭がない、という趣旨のことをプーチンはかつて言ったそうですが、これにも納得できます。

 ロシアや東ドイツにおいて、過去を懐かしむ声があるということは、やはり人間なのだなという風に納得できます。しかし、それでは前に進まない。ただ、過去、故郷を懐かしむことは、少なからず心に安らぎをもたらすものだと思います。
 ノスタルジア。私はこれを一種の心の鎮痛剤だと思っています。多くのひとは、心がくすぐられるのではないでしょうか。どっぷりと浸かることは、あまり良くありませんが、人が大事にするものの一つではあると、信じています。


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2010年04月08日

臨戦態勢か!?

 結構ショックを受ける記事を見た。

テロリストの声明、報道ダメ ロシア下院に法案2010年4月8日7時4分
【モスクワ=副島英樹】モスクワの地下鉄連続自爆テロなど各地でテロ事件が相次ぐロシアで、指名手配されているテロリストの声明の報道を一切禁じる法案が下院に提出された。提案者の与党下院議員は「殺人者に演壇を提供するのは許せない」と報道規制の必要性を強調。これに対し「事件の背景が分からなくなる」などの批判も出ている。
 法案のきっかけは、40人が犠牲となったモスクワ事件の犯行声明を出したロシア南部・北カフカスの武装勢力リーダー、ウマロフ指導者の主張を、一部の国内メディアが報じたことだった。犯行声明でウマロフ指導者は、チェチェン武装勢力を力で抑え込んだプーチン首相への報復などと述べていた。
 インタファクス通信によると、法案を提出した最大与党・統一ロシアのシュレーゲリ議員は「武装勢力に関するニュースは彼らの壊滅についてだけでいい」とも主張。グーグルのユーチューブでウマロフ指導者の声明が流れ、数十万件のビュー(視聴)があると指摘、「テロリストを支持しているのか」とグーグルも批判した。
 これに対し、ロシアジャーナリスト連盟のフェドートフ書記は「テロリストの正当化のために言い分をまるまる載せるのはよくないが、概要でも伝えないと背後に何があるのか分からない。テロリストの動機は何かを知る必要がある」と述べ、「声明の内容ではなく発言者で禁じるのは間違っている」と批判した。(asahi.com)


 最近の爆破事件を受け、メドベージェフ大統領をはじめ政府は、テロリストに対抗する姿勢を見せている。実際に、北カフカースにおける新たな反テロ部隊が組織されるという。対抗する、ということは、国家の立場からすれば理解は出来る。しかし、テロリストの声明を報じないというのは、国民の安全を無視した軽薄なものだと言わざるを得ない。テロリストの声明を発表するということは、国民の危機意識を喚起し、少なからず被害の縮小には繋がるはずである。
 むしろ、テロリストの声明を発表せずに、実際に今後テロが起こって、犠牲者を出すようなことがあれば、逆に責任は報道しなかった側にあるだろう。テロリストに加担しているのは国家であるともいえよう。

 ロシアでは、ほとんどのマスメディアは政府の傘下にある。もし、この法案が通るのなら、その報道規制は容易なはずだ。テロに関する情報を制限して、政府は何をしたいのだろうか。戦争の口実でも作りたいのであろうか。私には、今回の法案の論理が理解しがたい。
 テロへの報復という口実なら、第2次チェチェン紛争の二の舞である。今回も、同じような道を辿るとすれば、恐らくはかつてのように泥沼化するのではなかろうか。これでは、全く進歩していないことになる。

 単なる一つの法案なのであるが、私はここまで連想してしまった。まだ、法案の状況なので、否決されることを切に願う。


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2010年04月07日

経済好転!?

 ロシアが、一連の世界金融危機で最も打撃を受けた国の一つであるということは、よく語られます。そして、その傷は深かったようで、現在もなおその影響は残っています。しかしながら、カマズ(自動車会社)やヴォルガテレコム、PIKグループ(不動産開発、建設、住宅基金運用などを扱うディベロッパー)、ノヴォリペツク製鉄などの大手が軒並み黒字に転ずるなど、回復の兆しは見えている模様です。

 そのような中、財務省にも動きが見られます。
 政府が請け負う公債において、海外からの債務(特にユーロ債務)を減らし、国内からの債務を増やすという方向を示しました。これは、国内の経済状況が好転したことにより、公債におけるルーブルの割合が大きくなるということを意味します。単にルーブルの割合が大きくなるだけですので、全体の債務額は変わりません。
 最近、原油価格の上昇や、海外から関心を得ている利回りの良い資産などの影響で、ルーブルが強くなっています。一年間でユーロに対して、およそ10〜15パーセントほどルーブル高に転じています。このような変化が、今回の国家予算の見直しに繋がったのでしょう。
 そして、2011年、2012年…と、今後の予算の見直しも予定されています。

 ただ、一番良かった頃に戻るには、まだまだ月日がかかるそうです。現段階では、2015年までには、安定した予算を組んでゆきたいということが言われています。ただ、上記のように、少なからず良い状況には向かいつつありそうです。

 ここ数ヶ月の動きのみで、事を計るのは少々軽率かもしれませんが、あの金融危機をどん底だと考えると、このように上向きを示すことは不思議ではないかもしれません。

参照The Moscow Times

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